東京地方裁判所 昭和61年(ワ)4125号 判決
一 原告が本件意匠権(一)ないし(三)を有し、その登録意匠の範囲が別紙意匠公報(一)ないし(三)に示すとおりの鉄骨用吊り足場、足場板及び足場取り付け具の形状(本件登録意匠(一)ないし(三))であること、被告が被告製品(一)及び(二)を販売及び賃貸しており、その意匠が別紙目録(一)及び(二)に共通の鉄骨用吊り足場、足場板及び足場取り付け具の形状(被告全体意匠、被告足場板意匠及び被告足場取り付け具意匠)であることは、当事者間に争いがない。
二 本件登録意匠(一)ないし(三)の構成が請求の原因2のとおりであること(ただし、本件登録意匠(二)の滑り止め用の突起の断面形状は除く。)、被告全体意匠、被告足場板意匠及び被告足場取り付け具意匠の構成が請求の原因4のとおりであること(ただし、被告全体意匠の具体的構成a´及びb´は除く。)は、当事者間に争いがない。右争いのない事実に基づき、両意匠の類否について以下判断する。
1 本件登録意匠(一)と被告全体意匠との類否について
本件登録意匠(一)及び被告全体意匠は、いずれも鉄骨用吊り足場に係るものであつて、右のとおりの構成を有するものであるから、主として、別紙目録(一)及び(二)の使用状態を示す斜視図にみられるような外観に、特に看者の注意を引く部分が現れるものということができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、両意匠は、基本的構成B、E及びFとB´、E´及びF´とにおいてはほぼ同一であるが、(一)本件登録意匠(一)は、二本の後側支柱(基本的構成A)と同数の前側支柱(基本的構成B)を有する四本支柱の構成であるのに対し、被告全体意匠は、二本のスライド後側支柱と同数の基本後側支柱(基本的構成A´)及び二本の前側支柱(基本的構成B´)を有する六本支柱の構成であり、かつ、二本のスライド後側支柱の上端部に、丸形把手が設置されている、(二)本件登録意匠(一)は、二本の側部手摺が前側支柱と後側支柱間に設置されている(基本的構成C)のに対し、被告全体意匠は、二本の側部手摺が前側支柱とスライド後側支柱間に設置されている(基本的構成C´)、(三)本件登録意匠(一)は、前側支柱間に、一本の前部手摺及びX字状の安全枠が設置されている(基本的構成D)のに対し、被告全体意匠は、前側支柱間に、二本の前部手摺及び右二本の前部手摺間に対角線状に一本の補強材が設けられている(基本的構成D´)、以上のような差異がある。そして、右(一)ないし(三)の差異は、特に看者の注意を引きやすい部分である支柱の本数及び形状等についての顕著な差異であつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、視覚を通じての美観を異にするものと認められるから、類似するものとは認められない。原告は、本件登録意匠(一)は、折畳み式足場装置をコンパクトに折り畳む意匠構成のモチーフに基づくものであつて、その要部は、長方形の足場板並びにその付属設備である手摺、前側支柱及び斜材が後側支柱の長さの範囲内にコンパクトに格納されるように構成された機能美にある旨主張するところ、たとい、本件登録意匠(一)の創作のモチーフが原告主張のとおりであるとしても、前記本件登録意匠(一)の構成に照らすと、その要部を原告主張のとおりであると認めるに由なく、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。また、原告は、前記相違点について、(1)被告全体意匠のスライド後側支柱は、基本後側支柱の内側に沿うように設置されているため、看者の目には、外観上、基本後側支柱そのものと映るし、また、被告全体意匠の把手は、看者の注意を格別引き付けるものではない、(2)被告全体意匠の側部手摺の位置は、格別看者の注意を引き付けるものではない、という理由により、右相違点は、いずれも部分的な形状の微差というべきであつて、本件登録意匠(一)と被告全体意匠とは、全体的に観察した場合、類似するものというべきである旨主張するが、右差異が特に看者の注意を引きやすい部分に関するものであることは、前認定のとおりであるから、原告の右主張も、採用の限りでない。
2 本件登録意匠(二)と被告足場板意匠との類否について
本件登録意匠(二)及び被告足場板意匠は、いずれも足場板に係るものであつて、前記のとおりの構成を有するものであるから、少なくとも、足場板の表面積中で最大の面積を占める部分であり、また、作業者が実際にその上に立つて作業を行う作業床の表面の外観に、特に看者の注意を引く部分が現れるものと認めることができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、本件登録意匠(二)は、足場板の単体である作業床が二つである(基本的構成A)のに対し、被告足場板意匠は、作業床が三つであり(基本的構成A´)、また、本件登録意匠(二)は、作業床の表面に多数の滑り止め用の突起を列設している(基本的構成B)のに対し、被告足場板意匠は、作業床の断面が<省略>状の凹凸状である(基本的構成B´)点で相違し、その他の基本的構成は同一であるところ、更に、具体的構成についてみるに、本件登録意匠(二)は、作業床の表面に、等間隔の突起が長手方向に多数(二三列)列設している(具体的構成d)のに対し、被告足場板意匠は、作業床の表面が凹凸をなして、この凹凸条が長手方向に一〇個列設しており(具体的構成d´)、また、本件登録意匠(二)は、一方の作業床の巾木に相対する他端に、J字状の溝が設けられ、他方の作業床の巾木に相対する他端に、かぎ状突出部が設けられている(具体的構成e)のに対し、被告足場板意匠は、巾木を有する二つの作業床のそれぞれの他外端に、作業床下方にJ字状の溝が設けられ、その余の作業床は、両外端とも<省略>状の引掛部を設けている(具体的構成e´)点で相違し、その他の具体的構成は同一であること(ただし、当事者間に争いのある点は除く。)が認められる。そこで、更に、足場板の作業床の形態の差異について検討すると、本件登録意匠(二)の作業床の表面は、滑り止め用の突起の巾が突起相互間の巾と比較して極めて狭いため、平面から見て、相互間隔の狭い二本の線を長手方向に二三対引いたように見え、また、正面から見て、平板上に小突起が間隔をおいて二三個設けられているように見え、全体的には、比較的平面的で、かつ、平板上に巾の狭い凸条を多数並べているとの印象を与え、右作業床の表面形状が本件登録意匠(二)の一つの特徴となつているのに対し、被告足場板意匠の作業床の表面は、凹部と凸部の巾が同一であるため、平面から見て、長手方向に二〇本の線を引いたように見え、また、正面から見て、<省略>状に加工された板のように見え、全体的には、細長い凹面と凸面とを相互に並べて形成した板であるという印象を与えるものであることが認められる。そして、右の差異は、特に看者の注意を引きやすい部分についてのものであつて、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠は、視覚を通じての美観において異なつた印象を与えるものというべきであるから、両意匠は、類似しているものとは認められない。原告は、本件登録意匠(二)のモチーフの原型は、別紙参考図のとおりであつて、その基本的な意匠の構成は、独特のものであるのに対し、被告足場板意匠も、その基本的な意匠の構成において右と全く同一であるから、両意匠は、類似するというべきである旨主張するところ、たとい、本件登録意匠(二)の創作のモチーフの原型が原告主張のとおりであるとしても、前記本件登録意匠(二)及び被告足場板意匠の構成に照らし、モチーフの原型が同一であるとの点から直ちに両意匠は類似するものと認めることは困難であり、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。また、原告は、本件登録意匠(二)の滑り止め用突起は、被告の主張するような断面三角形ではなく、<省略>形の截頭円錐形であり、これは、被告足場板意匠の滑り止め用突起の<省略>形の頭部両端を角切りした形と同様であつて、看者の立場からすれば、彼此類似と判断されるものである旨主張するが、右主張事実について検討を加えるまでもなく、両意匠が類似しないことは、前説示から明らかであるから、原告の右主張も、採用の限りでない。
3 本件登録意匠(三)と被告足場取り付け具意匠との類否について
本件登録意匠(三)及び被告足場取り付け具意匠は、いずれも足場取り付け具に係るものであつて、前記のとおりの構成を有するものであるから、主として、別紙意匠公報(三)の使用状態を示す参考図、別紙目録(一)及び(二)の使用状態を示す斜視図にみられるような外観に、特に看者の注意を引く部分が現れるものということができる。そこで、右外観について両意匠を対比してみるに、両意匠の基本的構成は、足場取り付け具の部材を表示するにすぎず、必ずしもその外観を表示するものとはいえないから、両意匠がその基本的構成において同一であることから直ちに両意匠は類似するとの結論を導くことはできない。そこで、更に、両意匠の具体的構成の異同について検討するに、本件登録意匠(三)は、具体的構成aにみられるとおり、ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ部の端部に一体に設けたロツド状の基部と、その基部の端部が二又状に分かれた支持片とからなり、取り付け部は、前記二又状支持片間に挿入した六角ボルト及びこれに取り付けた六角ナツトからなるのに対し、被告足場取り付け具意匠は、具体的構成a´にみられるとおり、ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ桿の端部に固定した凸状支持片とからなり、取り付け部は、前記支持片を挿入できる二又状の固定具並びにこれらを装着するための六角ボルト及び六角ナツトからなり、また、本件登録意匠(三)は、具体的構成bにみられるとおり、フツクの背面が四半円状の形態であり、フツクの両面に、三つのリブが形成されているのに対し、被告足場取り付け具意匠は、具体的構成b´にみられるとおり、フツクの背面が概ね四半円状である形態で、フツクの両面は無模様であることが認められる。そして、右の差異は、特に看者の注意を引きやすい部分についてのものであつて、両意匠を全体的に観察した場合、視覚を通じての美観において異なつた印象を与えるものであるから、両意匠は、類似しないものといわざるをえない。原告は、両意匠は、基本的構成をほぼ同一にするものであるから、類似するものというべきである旨主張するが、この点については前説示のとおりであるから、原告の右主張は、採用の限りでない。
三 よつて、原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却する。
〔編註その一〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。
一 請求の原因
1 原告は、次の(一)ないし(三)の意匠権(以下意匠権については「本件意匠権(一)、その登録意匠については「本件登録意匠(一)」というようにいう。)を有する。
(一) 意匠に係る物品 鉄骨用吊り足場
出願 昭和四九年一二月三〇日
登録 昭和五三年一〇月一三日
登録番号 第四九二五一〇号
登録意匠の範囲 別紙意匠公報(一)表示のとおり
(二) 意匠に係る物品 足場板
出願 昭和五〇年九月一九日
登録 昭和五五年一月三一日
登録番号 第五二九三九五号
登録意匠の範囲 別紙意匠公報(二)表示のとおり
(三) 意匠に係る物品 足場取り付け具
出願 昭和五〇年九月二二日
登録 昭和五二年三月一五日
登録番号 第四五一五〇一号
登録意匠の範囲 別紙意匠公報(三)表示のとおり
2(一) 本件登録意匠(一)は、次の構成からなる。
(1) 基本的構成
A 長方形状の足場枠の背部両端部に、二本の長い後側支柱を枢着して起立させていること
B 足場枠の前部両端部に、短い二本の前側支柱を枢着して起立させていること
C 相対向する前側支柱と後側支柱間に、二本の側部手摺を水平に枢着していること
D 前側支柱間に、水平な前部手摺とX字状の安全枠とを設置していること
E 後側支柱間に、二本の背部手摺を水平に設置していること
F 相対抗する後側支柱と前側支柱の頂部との間に、斜材を連結していること
G 各後側支柱の背部上方に、取り付け具を枢着設置していること
(2) 具体的構成
a 足場枠は、外周に巾木を起立させた長方形の足場板と、足場板の下面に設けたややX字状の補強フレームとからなり、足場板の上下面は無模様であること
b 後側支柱と前側支柱とは、断面がL字状で、その長さは、前側支柱の長さと足場枠(足場板)の長方形の短い一辺の長さとの合計が、ほぼ後側支柱の長さと同等となつていること
c 二本の側部手摺は、断面がコ字状で、足場枠に対して平行に、前側支柱の上部及び中間部の位置にそれぞれ枢着されていること
d 前部手摺は、前側支柱の上部間に、X字状の安全枠は、X字状の端部が二本の前側支柱にそれぞれ固定され、いずれも平板状に構成されていること
e 二本の背部手摺は、足場枠と平行であり、その上方手摺は、平板状で後側支柱の頂部間附近に、その下方手摺は、断面がコ字状で後側支柱の中間部よりやや下部にそれぞれ設けられていること
f 斜材は、鎖であること
g 取り付け具は、ブラケツトを介して枢着したねじ桿と、ねじ桿に挿入されたフツク状筒体と、筒体より後方に位置してねじ桿に螺合される蝶ナツトとからなること
(二) 本件登録意匠(二)は、次の構成からなる。
(1) 基本的構成
A 足場板の単体である二つの作業床を結合した作業床の両外端に、上下に起立する巾木を設けていること
B 作業床の表面に、多数の滑り止め用の突起を列設していること
C 足場板の単体である二つの作業床の結合部は、一方の作業床に溝部を、他方の作業床に引掛部をそれぞれ長手方向に沿つて設けていること
(2) 具体的構成
a 二つの単体である作業床が水平に結合されていること
b 作業床の両外端に、下方より上方の方がやや長い巾木が垂直に起立していること
c 巾木の上方端に、湾曲部が長手方向に沿つて設けられていること
d 作業床の表面に、等間隔の断面截頭円錐形突起が長手方向に多数(二三列)列設されていること
e 一方の作業床の巾木に相対する他端に、J字状の溝部が設けられ、他方の作業床の巾木に相対する他端に、J字状溝部に引掛固定をするかぎ状突出部を設け、両者は、密に嵌合していること
(三) 本件登録意匠(三)は、次の構成からなる。
(1) 基本的構成
A ねじ取り付け部を装置したねじ桿本体と、
B ねじ桿本体にスライド自在に挿入したフツク状筒体と、
C ねじ桿本体に螺合され、筒体より後方に位置するナツトからなること
(2) 具体的構成
a ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ部の端部に一体に設けたロツド状の基部と、その基部の端部が二又状に分かれた支持片とからなり、取り付け部は、前記二又状支持片間に挿入した六角ボルト及びこれに取り付けた六角ナツトとからなる(なお、ねじ桿の外側に、なべ蓋状の小さなナツト止め片が固定されている。)こと
b ねじ桿本体にスライド自在に挿入したフツク状筒体は、筒体部分がパイプ状に空洞で、フツクの平面側はテーパー状で、その背面が四半円状の形態であり、フツクの両面に、三つのリブが形成されていること
c ナツトは、普通の蝶ナツトであること
3 被告は、業として、被告製品(一)及び(二)を販売及び賃貸している。
4 被告製品(一)及び(二)は、被告製品(一)が被告製品(二)よりも小さいだけで、意匠を共通にするものであるところ、被告製品(一)及び(二)の鉄骨用吊り足場(別紙目録(一)(1)及び(二)(1))、その一部である足場板(同目録(一)(2)及び(二)(2))及び足場取り付け具(同目録(一)(3)及び(二)(3))の意匠は、次の構成からなる。
(一) 被告製品(一)及び(二)の鉄骨用吊り足場全体の意匠(以下「被告全体意匠」という。)
(1) 基本的構成
A´ 長方形状の足場枠の背部両端部に、上端部に丸型把手を設置した二本のスライド後側支柱と、それに沿うように設置した二本の長い基本後側支柱とを起立させていること
B´ 足場枠の前部両端部に、スライド後側支柱よりやや短い二本の前側支柱を枢着して起立させていること
C´ 相対向する前側支柱とスライド後側支柱間に、二本の側部手摺を水平に枢着していること
D´ 前側支柱間に、水平な二本の前部手摺と、その二本の前部手摺間に対角線状に一本の補強材とを設置していること
E´ 基本後側支柱間に、二本の背部手摺を設置していること
F´ 基本後側支柱と前側支柱の頂部との間に、斜材を連結していること
G´ 各基本後側支柱の背部上方に、足場取り付け具を設置していること
(2) 具体的構成
a´ 足場枠は、外周に巾木を起立させた長方形の足場板で、足場板の上面は、滑り止め用の断面<省略>形の突起が、一〇列、線様に設けられていること
b´ 基本後側支柱、スライド後側支柱及び前側支柱は、その断面がL字状で、その長さは、前側支柱の長さと足場枠の長方形の短い一辺の長さとの合計が、ほぼ基本後側支柱の長さと同等となつていること
c´ 二本の側部手摺は、平板状パイプで、足場枠に対して平行に、前側支柱の上部及びその中間に位置し、かつ、後側支柱の内側に設置されていること
d´ 二本の前部手摺は、前側支柱の上部及びその中間部よりやや下部に、いずれも平板状パイプにて足場枠に水平に設置され、平板状パイプの補強材が、一本、上方の前部手摺と下方の前部手摺とを対角線で結ぶように設置されていること
e´ 二本の背部手摺は、いずれも平板状パイプで、一本の背部手摺は、基本後側支柱の上部間に、他の背部手摺は、中間の側部手摺よりやや上部の位置にそれぞれ設置されていること
f´ 斜材は、平板状パイプであること
g´ 足場取り付け具は、ブラケツトを介して枢着したねじ桿と、ねじ桿に挿入されたフツク状筒体と、筒体より後方に位置してねじ桿に螺合される蝶ナツトとからなること
(二) 被告製品(一)及び(二)の足場板の意匠(以下「被告足場板意匠」という。)
(1) 基本的構成
A´足場板の単体である三つの作業床の外側作業床の両外端に、上下に起立する巾木を設けていること
B´作業床の断面は、<省略>状の凹凸状であること
C´足場板の単体である三つの作業床の結合部は、一方の作業床に溝部を、他方の作業床に引掛部をそれぞれ長手方向に沿つて設けていること
(2) 具体的構成
a´三つの単体である作業床が水平に結合されていること
b´ 三つの作業床の外側両作業床の外端に、下方より上方がやや長い巾木が垂直に起立していること
c´ 巾木の上方端及び下方端に、湾曲部が長手方向に沿つて設けられていること
d´ 作業床の床面は、凹凸面をなして、この凹凸条が長手方向に一〇条列設していること
e´ 巾木を有する左右二つの作業床のそれぞれの他外端に、作業床下方にJ字状の溝部が設けられ、その余の作業床は、両外端とも<省略>状の引掛部を設けて、右三つの作業床を密に嵌合していること
(三) 被告製品(一)及び(二)の足場取り付け具の意匠(以下「被告足場取り付け具意匠」という。)
(1) 基本的構成
本件登録意匠(三)の基本的構成と全く同一である。
(2) 具体的構成
a´ ねじ桿本体は、長いねじ部と、ねじ桿の端部に固定した凸状支持片とからなり、取り付け部は、前記支持片を挿入できる二又状の固定具並びにこれらを装置するための六角ボルト及び六角ナツトからなること(なお、ねじ桿の外端に、なべ蓋状の小さなナツト止め片が固定されている。)
b´ ねじ桿本体にスライド自在に挿入したフツク状筒体は、筒体部分がパイプ状空洞で、フツクの平面側はテーパー状で、その背面が概ね四半円状である形態で、フツクの両面は無模様であり、また、筒体側に構造部材への当板を有すること
c´ ナツトは、普通の蝶ナツトであること
5 本件登録意匠(一)ないし(三)と被告全体意匠、被告足場板意匠及び被告足場取り付け具意匠とをそれぞれ対比すると、次のとおりである。
(一) 本件登録意匠(一)と被告全体意匠とを対比するに、本件登録意匠(一)は、折畳み式足場装置をコンパクトに折り畳む意匠構成のモチーフに基づくものであつて、その要部は、長方形の足場板並びにその付属設備である手摺、前側支柱及び斜材が後側支柱の長さの範囲内にコンパクトに格納されるように構成された機能美にあるのに対し、被告全体意匠も、本件登録意匠(一)と同一のモチーフに基づくものであつて、その要部は、長方形の足場板並びにその付属設備である手摺、前側支柱及び斜材が後側支柱の長さの範囲内にコンパクトに格納される機能美にあるところ、後側支柱、前側支柱及び足場板の構成比において本件登録意匠(一)とほぼ同一であるから、両意匠は、要部を共通にし、そして、全体的に観察した場合、視覚を通じての美観を同じくするものであり、したがつて、類似するものというべきである。
(二) 本件登録意匠(二)と被告足場板意匠とを対比するに、本件登録意匠(二)のモチーフの原型は、別紙参考図のとおりであつて、その基本的な意匠の構成は、独特のものであるのに対し、被告足場板意匠も、その基本的な意匠の構成において右と全く同一であるから、両意匠は、類似するものというべきである。
(三) 本件登録意匠(三)と被告足場取り付け具意匠とを対比するに、両意匠は、基本的形態をほぼ同一にするものであるから、類似するものというべきである。
6 よつて、原告は、被告に対し、請求の趣旨1及び2の判決を求める。
二 請求の原因に対する被告の認否及び主張
1 請求の原因1ないし4は認める(ただし、本件登録意匠(二)の滑り止め用の突起は、断面截頭円錐形ではなく、断面三角形である。また、被告全体意匠の具体的構成a´及びb´は争う。)。同5は、否認する。
2(一) 本件登録意匠(一)と被告全体意匠との類否について
本件登録意匠(一)と被告全体意匠とは、次に述べるとおり、その構成を異にし、類似しない。
(1) 本件登録意匠(一)の基本的構成Aは、長方形状の足場板の背部両端部に、二本の長い後側支柱を枢着して起立させている構成であるのに対し、被告全体意匠の基本的構成A´は、これに加え、上端部に丸型把手を設置した二本のスライド後側支柱を有する構成である。
(2) 本件登録意匠(一)の基本的構成C及び具体的構成cにいう側部手摺は、前側支柱及び後側支柱から突出しているのに対し、被告全体意匠の基本的構成C´及び具体的構成c´にいう側部手摺は、前側支柱及びスライド後側支柱に枢着され、基本後側支柱の内側に位置している。
(3) 本件登録意匠(一)の基本的構成Fにいう斜材は、同具体的構成fのとおり、鎖で構成されているのに対し、被告全体意匠の基本的構成F´にいう斜材は、具体的構成f´のとおり、平板状のパイプで構成されている。
(4) 本件登録意匠(一)の基本的構成Aにいう足場板の底面は、<省略>状の突状を有する足場板の構成であるのに対し、被告全体意匠の足場板の底面は、後に述べるように、凹凸面を下から見ることができる構成である。
(5) 以上のうち、特に顕著な差異は、右(1)のとおり、本件登録意匠(一)は、前側支柱及び後側支柱の四本柱構造であるのに対し、被告全体意匠は、前側支柱、基本後側支柱及びスライド支柱の合計六本柱構造であるという基本的な構造の差異であり、しかも、この基本的な構造は、外部からよく見えるものである。なお、右の四本柱構造は、実開昭四七―二二七二六号公開実用新案公報(乙第三号証)により、公知意匠となつていたのであるから、本件登録意匠(一)の要部は、その四本柱構造にあるのではなく、斜材に鎖を用いた構成並びに手摺及び足場板の構成に存するものというべきところ、被告全体意匠は、右要部の構成において、前述のように相違があるのであるから、本件登録意匠(一)とは本質的に異なるものである。
(二) 本件登録意匠(二)と被告足場板意匠との類否について
本件登録意匠(二)の要部は、滑り止め用の突起の形状に存することが明らかであるところ、本件登録意匠(二)の基本的構成Bにいう滑り止め用の突起は、断面三角形の突起を作業床表面上にのみ設けたものであり、また、突起の巾を一とすると、突起間の巾は一〇程度であつて、表面から見た場合、大海に細い線が引かれた感じであり、更に、足場板の裏面から見れば、平面であるのに対し、被告足場板意匠は、作業床自体の断面を<省略>状の凹凸に曲折したものであり、また、凹凸部の巾はほぼ同一であつて、足場板は段々畑を見たような感じであり、更に、裏面から見れば、凹凸面であるから、両者の外観は、全く異なる。なお、足場板の類似物品とみなされる作業台板の波形断面形状の意匠が、昭四九―一五〇〇七号特許公報(乙第五号証。その三頁五欄一一行ないし一七行及び第五図)により、公知となつているところ、被告足場板意匠は、右公知の波形断面形状と同一の波形断面形状を採用しているものであるから、本件意匠権(二)が、このような被告足場板意匠にまで及ぶとは到底考えられない。
(三) 本件登録意匠(三)と被告足場取り付け具意匠との類否について
本件登録意匠(三)の基本的構成A及び具体的構成aは、ロツド状基部の端部が二又状に分かれた支持片を有するだけであるのに対し、被告足場取り付け具意匠の基本的構成A´及びa´は、凸状の支持片に二又状の固定具を挿入したものであるから、両意匠は、フツク状筒体の反対側から見た場合、その外観が異なる。また、本件登録意匠(三)の具体的構成bは、フツク状筒体側から見た場合に、フツク状筒体に三つのリブの模様を有するのに対し、被告足場取り付け具意匠の具体的構成b´は、同方向から見た場合に、フツク状筒体は無模様であり、また、構造部材への当板が、フツク状筒体のフツクと対向する筒体に取り付けられているから、その外観が異なる。なお、原告は、本件登録意匠(三)と被告足場取り付け具意匠とは、基本的形態をほぼ同一にするものであるから、類似する旨主張するが、前記公開実用新案公報(乙第三号証)により、足場装置に固定した筒体に螺入したフツク状体で足場装置を構造部材に固結するもので、フツク状部の輪郭形状において本件登録意匠(三)と共通性を有するものが、また、米国特許第一二九五四五三号明細書(乙第七号証)により、足場取り付け部において垂直回動部分を有する外観構成の足場取り付け具の意匠がそれぞれ公知となつていたのであるから、本件登録意匠(三)の要部は、そのフツク状筒体の原告が主張するような構成にあるとはいえず、原告の右主張は、失当である。
〔編註その二〕 本判決添付の物件目録は左のとおりである。
目録(一)
(1)鉄骨用吊り足場
<省略>
(2)(1)に使用されている足場板
<省略>
(3)(1)に使用されている足場取り付け具
<省略>
目録(二)
(1)鉄骨用吊り足場
<省略>
(2)(1)に使用されている足場板
<省略>
(3)(1)に使用されている足場取り付け具
<省略>
(以下省略)
〔編註その三〕 本判決添付の登録意匠の内容は左のとおりである。
492510 出願 昭 49.12.30 意願 昭 50―702 登録 昭 53.10.13
意匠に係る物品 鉄骨用吊り足場
説明 左側面図は右側面図と対称にあらわれる
<省略>
529395 出願 昭 50.9.19 意願 昭 50―37996 登録 昭 55.1.31
意匠に係る物品 足場板
説明 本物品は、二つの単体からなり、各単体の外端には上下に起立する巾木を設け、又表面には長手方向に沿つて多数の滑り止め用突起を列設し、更に一方の単体の内側下部には溝部を長手方向に沿つて形成し、他方の単体の内側下部に設けた引掛部材が上記溝部に嵌合して二つの単体を水平に連結してなる建築、土木、造船用吊り足場装置の作業床に使用される金属製足場板である。図面中、右側面図、平面図、底面図は4cm2mm省略してある。背面図は正面図と対称にあらわれる。左側面図は右側面図と同一にあらわれる
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451501 出願 昭 50.9.22 意願 昭 50―38520 登録 昭 52.3.15
意匠に係る物品 足場取り付け具
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